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海外レポート!

009 ミラノサローネ2021特別展『supersalone(スーパーサローネ)』

2021ハイライト/Vaselli(ヴァゼッリ) - Kensaku Oshiro

イタリア、トスカーナ州に本社を構える石材メーカー「ヴァゼッリ」。
トラヴァーチンの産地でもあり、長年に渡り築き上げてきた石への
想いと職人の技が毎年革新的な作品を産み出しています。

Vaselliと大城 健作氏のコラボレーション
『EIDOS』新作発表
ミラノのショールームにて取材させていただきました!!

Kensaku Oshiro 大城 健作
1977年沖縄生れ。
1999年ミラノ工科大学デザインスクールの工業デザイン大学院を卒業後、ミラノで様々なデザインスタジオに勤める。
2004年から8年間、ピエロ・リッソ-ニ氏率いるLissoni Associatiのデザインチームに加わり、2012年より3年間、
ロンドンのBarberOsgerbyにて勤務。
2015年独立しミラノにオフィスを設立。
これまで世界のトップブランドと数多くのプロジェクトの開発
に携わり、国際的にも高い評価を得ている注目の日本人
デザイナー。


パネルサイドが緩やかなRを取る(面取り)ことによって、本来なら硬くて冷たい印象になりがちな石の素材も柔らかで暖かみのある印象に。

今回のEIDOS(エイドス)コレクションはラポラーノ・テルメというトラヴァーチンの採石場へ行き、山から石の塊を切り出すところからスタートするというプロジェクト。
商品は個別受注生産で、顧客の要望を受けてから石を切り出し制作していくシステムです。

大城氏から初めに山に行くことから始まったと聞いて、私が大学の卒業研究で布を織るためには素材からと思い立ち、構内の土地を借りて土を耕し、綿花を育てることから始めたプロジェクトを思い出しました。話の筋は少し違いますが、デザインは素材からの見極めがとても大切であることが共通して言えます。
今回は大城氏からとても素敵なお話が聞けました。

大城氏

今回のプロジェクトでは石という素材に対して尊敬の念を忘れずに真撃に向き合いながら物づくりを進行しました。
現場へ出向き、実際の山肌を眺め、私はこのプロジェクトを通して石に関してより深く考えるようになり、次第にこの素材に含まれる“時間性”というものに魅了されていきました。

石という素材は文明の道具として、人類の歴史に深く関わりを持ってきました。
イタリアにおいても石の文化は何世紀にも渡り職人たちによって伝承され、建築や彫刻、そしてプロダクトデザインへと発展してきました。

しかし、私たちは素材そのものが自然の中でどれだけ長い時間をかけて育まれてきたものなのかを忘れてしまいがちです。
特に石という素材は人間の寿命を遥かに超えて、何十万年もの時をかけてじっくりと形成されるものです。

一方、木は人が植えれば人の人生の中で回収出来る成長サイクルです。石は形成されるまでにもう一つの人類の歴史が必要なくらい時間がかかるのです。
だから、石という素材を地球から取り出して使うことは尊敬の念を忘れず、長く愛され、そしてより美しく表現できるデザインでなければならないと考えています。

バスタブ・踏み台・ラック

バスタブ・踏み台・ラック

パーテーション(内側)

パーテーション(内側)

パーテーション(外側)

パーテーション(外側)

EIDOS(エイドス)シリーズでは「光と影」がコレクションのテーマになっています。
コンセプトは光と影が織りなす境界線の美しさ、軽さと透明感、そして機能性。

パンチで穴を開けたようなデザインは石の素材とは思えないほどの透明感があり、3センチ程の厚みとパンチングの大きさ、穴同士の距離感が考え抜かれた設計になっており、絶妙な抜け感を表現しながらも、ちゃんとパーテーションの役割を果たしています。
時間の流れによって穴から射し込む光が、空間にゆらぎと広がりを与えてくれます。
また、バスタブに光が照らされると波のような模様とトラヴァーチンのラスティックな素材感が浮かび上がってきます。

まるで五右衛門風呂のようなバスタブは石の塊から彫刻のように削り出され、排水溝の他にオーバーフローがついており、見えない内部が極限まで薄く削り出され、かなりの軽量化が実現できたとのこと。これもヴァゼッリの技術とも言えます。

比較的若いトラヴァーチンはこのスポンジの様な有機的な穴と模様が特徴とされます。
長い年月をかけて作り出された模様は、一つとして同じものは生まれない価値ある大切な素材です。
若いと言っても数十万年かけて形成されたものですが、更に年月をかけたものは地層の自重によって上から下へ押しつぶされ、穴が埋まって硬いトラヴァーチンになるそうです。
因みに、パスタをこねる時に使う“のし台”は小麦粉が入らないくらいキメの細やかな年数が経った硬い大理石が使われています。


浴槽の内側と外側のR角度を微妙に変えることで削り出された美しいフォルムに更に洗練さが加わっています。
大城氏はこのRにこだわり、何度も職人さんと試作を重ねたそうです。
また、内部は水が入らないように同じ素材で穴埋めと磨き加工が加わり、肌触りよく滑らかに馴染みます。これもVaselliの職人技です。
実際に浴槽に入ってみましたが、サイズ感といい全体のフォルムが優しく包み込まれる感覚でした。

鏡貼りのワードローブ

鏡貼りのワードローブ

ベンチラック

ベンチラック

タオルハンガー

タオルハンガー

大城氏はベンチラックは出来る限り石を削り出して軽さを表現し、機能性を持たせたとのこと。
タオルハンガーは石の重さを利用し、下部にウェイトを持たせて安定感のあるデザインに。
両方共に削り出された部分の石はアクセサリーパーツなどに利用され、切り出された石の塊はひとかけらも無駄にしないデザイン、設計になっています。

大半の石素材の家具は板状のパネルを貼り込んでいく制作ですが、今回はバスタブと同じく側面のカーブをつけた立ち上がりの部分は3D構造なので、削り出しでしか作れません。

ただ軽くするために削り出してやりたいデザインを作るのではなく、塊から削り出していくことへの意味、価値のあるデザインと地域性を持たせた考えであるべきだと大城氏は語ってくれました。

自身の仕事への責任感と、素材から向き合い、クライアントと繰り広げられた熱い想いを最終形では「洗練・カッコイイ」の一言に収めるデザインアプローチは、同じモノ作りをするデザイナーとして深く感銘を受けました。

大城健作さん、有難うございました。

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